
「相続財産の中にマイナスの財産があるけれど、どうすればいい?」
「相続財産の範囲内で借金を返済することは可能?」
「相続放棄の手続きはどこにすればいいの?」
相続といえば、亡くなられた方の全財産を引き継ぐことになるため、プラスの財産だけでなく、借金のようなマイナスの財産も引き継ぐこととなります。
ご自身が作ったのではない借金を返済するとなると、金銭的にも心理的にも大きな負担を背負うことになりかねません。
このようなケースを想定して、相続の制度には、相続放棄や限定承認といった、遺産相続を希望しない方のための選択肢が設けられています。
本記事では相続放棄などについて、遺産相続の専門知識を持つ行政書士が、手続きのポイントをご説明します。
当事務所では、上田市をはじめとして長野県全域において、建設業許可申請、農地転用、遺言相続、会社設立などの各種手続に関し、書類の作成代行や作成代理および官公署への提出代理などを幅広く行っています。
ご相談や書類作成のみの場合は全国対応もしますのでお気軽にご連絡ください。
遺産の中に相続したくない財産がある場合、どうすればいい?
財産を引き継がないという選択も可能
相続財産には、引き継ぐことで得をするものだけではなく、借金のような、引き継ぐことで損をしてしまうものも含まれます。
例えば親御さんが亡くなられたときに、子である自分も把握していなかった負債があることを知った場合、動揺してしまうことがあるかもしれません。
しかし、相続の制度には相続放棄や限定承認といった選択肢が用意されているので、上記のような突然の出来事が起きた場合も、落ち着いて対処していくことが大切です。
「相続放棄」については、一度は耳にしたことがある方も多いのではないかと思いますが、これは、プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け取らないという、一切の財産を相続しないことを指します。
一方、「限定承認」というのはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは、プラス財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことを指します。
家庭裁判所での手続きが必要
相続放棄や限定承認を希望する場合は、家庭裁判所への手続きが必要です。
相続放棄の場合は相続放棄申述書、限定承認の場合は家事審判申立書を提出して手続きを行います。
書類の作成にあたっては、弁護士や司法書士といった専門家に頼むことで、手続きをスムーズに進めていくことが可能です。
当事務所で相続に関するご相談を受けた際に、相続放棄や限定承認をしたいとなった場合には、他士業にお繋ぎすることもできますので、ぜひお気軽にご相談ください。
相続放棄や限定承認には期限があることに注意
ここで注意しておきたいのが、相続放棄や限定承認の手続きは「相続が開始したことを知った日から3カ月以内」に行わなければいけないということです。
この3カ月の期間のことを「熟慮期間」と呼びます。
この熟慮期間を過ぎてしまうと、「単純承認」といって、一切の財産を相続することになってしまいます。
遺産を相続するかどうか迷っているうちに、3カ月の熟慮期間が過ぎてしまったということがないように、相続開始後に不安や疑問がある場合は、専門家に早めの相談をしていただくことがおすすめです。
一切の財産を引き継がない相続放棄
相続財産の調査はしっかりと
相続放棄をする前提として、一切の財産を受け取ってはならないとされていますが、例えば被相続人に負債があることを知らず、プラスの遺産を受け取った後に、負債があることが発覚した場合はどうなるのでしょうか。
この場合、後から相続放棄を選択することはできないことになっているので、注意が必要です。
相続が発生した場合は、遺産の過多を問わず一度相続財産調査をしっかりと行って、相続財産の全貌を明らかにした上で判断をしていくようにしましょう。
「相続分」の放棄と混同しないよう注意が必要
「相続放棄」によく似た言葉として「相続分の放棄」というものがあります。
相続分の放棄は「私は遺産を受け取りません」という意思表示ですが、これはあくまでも相続人間における遺産分割上の取り決めにすぎません。
よって、被相続人に負債があったことが発覚した場合は、相続人間で相続分の放棄の意思表示をしていたとしても、債権者の請求に応じる必要があります。
対外的に相続放棄を主張するためには、必ず家庭裁判所への手続きをしなければいけないということを、念頭に置いておきましょう。
意外なところに潜む相続のリスク
相続放棄といっても、自分には関係がないだろうと思っている方も少なくありませんが、意外なところにマイナスの財産を相続する可能性が潜んでいる場合があるので、注意が必要です。
被相続人の資産や負債については、あまり把握していないという方も多いのではないでしょうか。
また、親族と疎遠になっている方も増えている昨今、被相続人の近況を全く知らなかったという方もいらっしゃるかと思います。
相続によるリスクから身を守るためにも、できれば生前のうちに親族と交流を深めておくのが一番ですが、あまり交流がないまま別れの時を迎えてしまったという場合は、専門家に相談しながら、早めの行動を取ることが大切です。
条件付きで財産を引き継ぐ限定承認
単純承認と相続放棄の中間的な選択肢
相続において、明らかにプラスの財産が多い場合は単純承認、またその逆である場合は相続放棄を選択すれば良いと言えますが、被相続人の資産状況が複雑になっていて、判断が難しいケースもあります。
そのような場合、単純承認を取るのか相続放棄を取るのか、リスクの可能性を感じながら不安なまま判断を下すのでは、相続が一種の賭けのようになってしまいかねません。
そこで中間的な選択肢として用意されているのが「限定承認」です。
これは、プラスの財産の中から負債を弁済し、余った財産を相続できるという方法なのです。
この方法を取ることで、債務超過であることが判明した場合でも、超過分の負債を相続しなくて済むことになります。
相続人にとっては、安心して相続を受けられる選択肢だと言えるでしょう。
限定承認は相続人全員で行う必要がある
先ほどの相続放棄の手続きは、相続人1人からでも行うことができますが、限定承認の場合は、相続人全員がそろって手続きをしなければなりません。
つまり限定承認は、相続人全員の意思を一致させた上で行わなければならないということです。
相続人の中に、1人でも単純承認をした人がいる場合、限定承認は選択できなくなることに注意しておきましょう。
このことからも、相続開始後は速やかに相続人調査を行い、円滑なコミュニケーションを図ることが大切だと言えます。
相続人の中に相続放棄をする人がいる場合はどうなる?
「限定承認は相続人全員で行う必要がある」ということですが、相続人の中に相続放棄を希望している人がいる場合はどうなるのでしょうか?
相続放棄をすると、法律上その人は初めから相続人ではなかったことになります。
そのため、限定承認は相続放棄をした人を除く全員で行っていくことが可能です。
相続に関するご相談は行政書士にお任せください
今回は、相続放棄や限定承認など、マイナスの財産がある場合に遺産を引き継がない方法について、ご説明しました。
相続において、単純承認以外の選択肢もあるということを知っておくだけでも、いざというときに慌てずに済むのではないかと思います。
当事務所はこれまでに、上田市をはじめとする長野県全域において、様々なケースにおける相続手続きのご相談に対応してまいりました。
相談や書類作成のサポートのみの場合は全国対応しますので、お困りの際は当事務所へお気軽にご相談ください。
まとめ
自分には相続なんて関係ないと思っている方も少なくありませんが、思わぬところからマイナスの遺産があることがわかり、相続の段階で慌ててしまうといったケースもあるのです。
そのようなときこそ冷静な判断をすることで、より良い選択をしていけるのではないでしょうか。
この記事を読まれた皆さんの、相続に関する疑問や不安を少しでも解消できれば幸いです。