「今だけ農地に資材を置きたい」
「使っていない農地を仮駐車場として一時的に利用できないかな?」
「イベントのために農地を使いたい!」
農地を所有している方にとって、一時的に農地を別の目的で使用したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
農地を一定期間の間だけ別目的で使用するには、「一時転用」の申請が必要となります。
本記事では、長野県上田市で多数の農地転用を手掛ける行政書士が、一時転用の詳しい内容から、メリットとデメリット、申請の注意点まで詳しく解説します。
これから農地を別目的で使用することを検討している方は、ぜひご一読ください。
一時転用とは?
一時転用の内容と事例
一時転用とは、農地を農地以外の目的のために一時的に利用し、利用が終了したら再度農地として利用することを言います。
例を挙げると、以下のような場合が考えられます。
- 一時的な資材置き場として利用する
- 農業を行わない期間のみ仮駐車場として活用する
- 一定期間のイベントの開催のために利用する
こんな人は一時転用がおすすめ
基本的に、農地は農地法という法律によって厳しく規制がなされており、地目が農地であるにもかかわらず無断で農業以外の目的で使用をしていると違反行為となり、罰金が課されることもあります。
しかし、別の地目に変更してしまうのは手間やお金がかかるだけでなく、農地としての利用が今後できなくなってしまうため一時的に別の目的で利用を考えている方にとってはあまりおすすめできません。
一時転用であれば、自分の好きな期間だけ農地以外に変えて使用ができるので、今後も農地として残しておきたい方にとって最適な選択肢になり得るでしょう。
一時転用のメリット・デメリット
一時転用を選択することのメリット・デメリットは以下のとおりです。
一時転用のメリット
1.農地以外の目的での使用が終了した後も農地として耕作や稲作が行える
一時転用であれば、農地以外の使用を終了した後も申請前と同様に農業を行うことができるため、より柔軟に農地を活用することができるでしょう。
2.通常の農地転用が困難な場合でも一時転用であれば許可が下りる可能性がある
基本的に、農用地区域内農地・甲種農地・第一種農地(※)などに該当する農地の場合は農地転用が原則不許可となってしまいます。
しかし、一時的な農地の使用となる一時農転の場合は、上記のような農地でも許可となる場合があります(事前に農業委員会へ確認・相談が必要)。
※農用地区域内農地・・・市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地
※甲種農地・・・市街化調整区域内の農業公共投資後8年以内の農地、集団農地で高性能農業機械での営農が可能な農地
※第一種農地・・・・集団農地(10ha以上)、農業公共投資対象農地、生産力の高い農地
3.固定資産税における課税科目は変わらない
農地転用の場合は、転用後に課税科目が変更されるため、農地で課税されていた時と比較して課税額に変更が生じます。
一時転用の場合は、あくまでも農地を利用するにとどまるため、課税科目は変わらないこととなります。
一時転用のデメリット
1.転用できる期間が3年以内と限られている
一時転用は、何年でも一時的に農地以外の目的で使用できるわけではありません。
原則として一時転用は3年の期限が設けられているため、3年以内で目的とする行為が終了する期間を決めて申請をすることとなります。
2.転用後は農地へ復元させなければならない
申請した転用期間を過ぎると、農地として利用しなければならないため、原状復帰する必要があります。
例えば、資材置き場として利用した場合は資材の改修や整地等も含めて農業を再開できるようにしなければいけません。
申請の流れ・注意点
ここからは、具体的な申請の流れを確認しましょう(長野県上田市での手続きを例としており、自治体によって多少異なることがあります)。
1.申請前に農業委員会へ報告・相談をする
事前に農業委員会へ行き、農地の種類や一時転用の申請が行えるかどうかの相談をしましょう。
場合によっては、一定の書類に追加して特例的な書類が必要となることがあるため二度手間にならないためにも書類作成の前に詳しく内容を伝えておくことが必要です。
2.書類の作成
申請することが決まったら、書類を作成しましょう。
申請に必要な書類は自治体によって異なりますが、申請書や土地の全部事項証明書だけでなく、申請土地の配置図・平面図・資金計画に関する書類など、作成には知識や時間を要する書類があります。
また、申請者が法人の場合は事業概況や事業計画の書類も必要となったり、借地の場合は賃貸借契約書が必要となったりするなど、個別の案件によって必要書類が異なります。
はじめて書類を作成する方にとっては作成を完了するまでに多大な時間をかけることとなりますので、確認しながら作成する場合は申請の2~3か月前には作成に着手するとよいでしょう。
3.農業委員会へ提出
作成した書類をまとめて農業委員会へ提出しましょう。
提出期限は各自治体によって異なり、期限を過ぎると申請できるのが1か月遅れてしまうことにもなりかねないので、あらかじめ確認が必要です。
4.追加書類があれば作成・提出
申請期限が過ぎ、農業委員会での書類の確認や現地調査が行われます。
その際、必要に応じて追加書類を提出するよう連絡がくることがあるので、連絡がくれば農業委員会の指定した日までに作成・提出する必要が生じます。
5.許可書交付
申請から約1か月程度で許可が下り、農業委員会から連絡がきたら許可書を受け取りましょう。
許可が下りるまでは申請農地に資材を置いたり、工事を着工したりしてはいけないので注意が必要です。
申請の代行は行政書士へ
前述したとおり、申請書類には専門的な知識が必要となることもあり、普段農地に関する書類を作成した経験のない方にとっては難しいと感じる方がほとんどでしょう。
また、役所に行かなければならない場合は平日に時間を作らなくてはならないため、仕事をしている方は特に申請に至るまでに時間がかかってしまうかもしれません。
農地関係に詳しい行政書士であれば、申請書類の作成から提出の代行まで迅速に行ってもらえるだけでなく、申請土地の状況によって生じる個別の注意点やアドバイスを受けることもできます。
申請に不安を感じている方は、行政書士への依頼も視野に入れるとよいでしょう。
当事務所では、上田市をはじめ、長野県全域で一時転用の申請代行を行っております。
まとめ
いかがだったでしょうか。
一時転用をするには一定の制約があるものの、別目的での使用が終わった後もすぐに農地として利用できるため、幅広い土地の活用方法を選べることができます。
申請書類を集めるには時間と労力がかかるため、行政書士へ依頼することも検討しつつ、あらかじめ余裕をもって作成にとりかかりましょう。