「農地を駐車場にするには、どのような手続きが必要?」
「駐車場にするかは未定だけれど、あらかじめ農地転用しておける?」
「ちょっと人に貸すだけでも、手続はしないといけない?」
相続によって農地の所有者となったものの、自分では耕作をするつもりがないといった方もいらっしゃるかと思います。
とはいえ、農地を使用しないまま所有し続けるのは勿体ないということで、農地転用をして、駐車場として利用したいというのはよくあるご相談です。
本記事では、これまで多数の農地転用を手掛けてきた行政書士が、相続した農地を駐車場に農地転用する場合の、手続きのポイントについて詳しく解説します。
当事務所では、上田市をはじめとして長野県全域において、建設業許可申請、農地転用、遺言相続、会社設立などの各種手続に関し、書類の作成代行や作成代理および官公署への提出代理などを幅広く行っていますので、お気軽にご相談・ご依頼ください。
どのような手続きが必要?
農地法第4条の許可申請
今回のように、農地を農地でないもの(駐車場)にする場合、都道府県知事等の許可、いわゆる農地転用の許可を受けなければなりません。
自己の農地を転用する場合は、農地法第4条の許可を受ける必要があります。
手続きは市町村の農業委員会へ
農地転用の相談窓口は、市町村の農業委員会事務局となっています。
このとき、土地の登記事項証明書や公図を事前に準備していくと、窓口での相談がスムーズになるでしょう。
これらの書類は、法務局の窓口で取得が可能です。
また、できれば所有不動産が一覧になって記載されている、固定資産の課税明細書も持参しておいた方が良いです。
なぜなら、転用を希望する農地が転用不可だった場合に、所有している他の農地を候補にできないかといった相談を進めることができるからです。
相続手続が済んでいるかどうかも確認
相続が発生している場合、遺産分割協議などで相続人が確定していないと、転用の手続を進めることはできません。
特に、相続に関して親族間で争いがある場合、行政書士などの専門家を利用しながら円満な解決を進めた後に、転用の手続に入っていくべきです。
農地転用は無計画にはできない
計画は具体的に
農地転用は「なんとなく」ではできない手続きです。
例えば、将来、駐車場にするか、既存の建物の増築用の土地にするか迷っているといった状況では、まだ農地転用の手続を取ることはできません。
なぜなら、農地転用の申請時には、転用後の用途や詳細な事由、工事に要する期間、費用などを詳しく申請書に記載しないといけないからです。
駐車場として転用するのであれば、どのような車を何台駐車し、賃貸借契約を締結しているかどうかまで記載する必要もあります。
また、転用後の土地に建物を建てないような場合でも、雨水の排水計画を細かく決めておかなければなりません。
そんなに細かいところまで、と思われるかもしれませんが、これまで農地だった所が、駐車場を造成してアスファルト舗装になった場合、地面に雨水が浸透しにくくなるなどといった環境の変化が起きるためです。
農地を農地以外に転用するということには、ある意味自然環境を変化させてしまうという側面があるため、自然災害や環境汚染といったことにも配慮をして計画をしなければならないとされています。
前もっての申請はできない
農地転用はいろいろと準備をするのが大変そうだから、余裕をもって早めに申請しておこうと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これも難しいところで、あまりに早すぎる申請はできないことになっています。
農地転用は、「今すぐ利用する必要があるから転用したい」という場合に申請するものなので、前もっての申請はできないのですが、かといって明確な期限が設けられているわけでもありません。
一般的には、許可証の交付から3カ月以内に工事に取り掛かるものとされてはいますが、このような手続の細かい部分については、農業委員会の窓口や、専門家である行政書士に相談しながら進めるのがよいでしょう。
転用の必要がないケースもある
農業用車両の一時駐車
農業をしている場合、農作業中、農地に一時的に軽トラックなどを停めておくという場合がありますが、このような一時駐車だけの場合は、駐車スペースとしての利用といえども、転用の手続の必要はありません。
ただし、軽トラックを農業と関連性のない用途で使用している場合は認められず、また、軽トラック以外の車でも認められる場合とそうでない場合があります。
砂利を入れるのはOKか
いつも軽トラックを停めている場所に、砂利を敷きたいという場合ですが、砂利を敷くことで農地性が失われるという見方もあるので、農業委員会と相談の上、進めた方がよいでしょう。
農地転用の手続が必要かどうかは、自己判断ではなく、窓口や専門家の意見を参考にした方がトラブルを未然に防ぐことができるかと思います。
無断転用は絶対にダメ
無断転用と罰則
「少し人に貸すぐらいだから、手続しなくてもいいよね」「手続きが面倒だから勝手に駐車場にしてしまおう」などといった行為は、絶対にしてはいけません。
農地法第64条には、許可を得ずに転用した場合や、虚偽の申請をした者に対する罰則が規定されています。
この規定に違反してしまうと、「三年以下の懲役又は三百万円以上の罰金」という厳しい罰を受けることになります。
知らないうちに無断転用してしまっていた…
罰則があるといえど、農地を所有している方全員が、農地法や農地転用についての詳しい知識を持っているわけではありません。
こちらの記事を読んでくださっている方の中にも、農地転用が必要だということを知らず、うっかり無断転用してしまっていた、又はその不安があるという方がいらっしゃるかもしれません。
無断転用をしてしまっていた場合の対処法としては、農地の状態に戻すか、事後的に農地転用の許可を得るかのどちらかになってきます。
また、すでに相当長い期間、例えば祖父母の代から駐車場として使われているというような場合は、「非農地証明」という措置を受けて、農地としての規制を受けないという方法もあります。
「長い期間」というのがどの程度まで認められるかは、自治体によって違ってくるため、窓口での確認が必要です。
いずれにせよ、無断転用に気づいた場合、速やかに農業委員会の窓口へ相談することをおすすめしますが、心細いようであれば、行政書士に相談するのも良いかと思われます。
行政書士は農地転用の専門家です
農地転用の書類作成は、ご自身で一から調べて進めるのは難しく、また、必要書類も揃えなければならないため、時間を要してしまいます。
また、自分で進めてみたものの、本当にこれで合っているのか、手続きに漏れはないか、などといった不安も出てくるかと思います。
行政書士は、農地転用に関する申請書類作成を専門としており、申請書類作成から提出の代行まで、安心して任せることが可能です。
当事務所では、上田市をはじめとする長野県全域において、農地関連を中心に書類作成依頼や官公署への申請手続を承っております。
まとめ
いかがだったでしょうか。
農地を相続したものの、仕事などで忙しく農業をするのは難しいという方でも、農地転用によって土地を有効利用することができます。
数年前に相続した農地を持て余しているという方も、一度農地の活用について考えてみてはどうでしょうか。