農地所有適格法人の要件を行政書士が解説!

稲作、施設園芸、畜産などの農業を、法人形態によって営む法人のことを総称して「農業法人」といいます。

また、農業法人が農地(耕作の目的に供される土地)を所有するためには、農地法で定める要件のすべてを満たす必要があり、その要件のすべてを満たした法人を「農地所有適格法人」といいます。

農地所有適格法人になるためには官公署の許可を受ける必要はありませんが、農地所有適格法人要件をすべて満たすことで、農地を所有できるのです。

ただし、例外として一般法人が農地を借りるだけであれば、一定の要件を満たすことで許可を受けることができます。

その要件とは、以下の3つです。

❶貸借契約に解除条件(農地を適切に利用しない場合に契約を解除すること)が付されていること

❷地域における適切な役割分担(集落での話し合いへの参加、農道や水路の維持活動への参画など)のもとに農業を行うこと

❸業務執行役員または重要な使用人が1人以上農業(農作業に限らず、マーケティング等経営や企画に関するものであってもよい)に常時従事すること

本記事では、農業を営むために必要となる農地所有適格法人の要件やその設立手続について行政書士がわかりやすく解説していきます。

当事務所では、上田市をはじめとして長野県全域において、建設業許可申請、農地転用、遺言相続、会社設立などの各種手続に関し、書類の作成代行や作成代理および官公署への提出代理などを幅広く行っていますので、お気軽にご相談・ご依頼ください。

 

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農地所有適格法人とは?

農地所有適格法人とは、農地法23項で規定されている法人で、農地を所有して農業経営を行うことのできる法人のことをいいます。

法律では、どのように農地所有適格法人は定義されているのか、見てみましょう。

農地法2条3項柱書は、次のように規定しています(条文の内容は要約しています)。

この法律で「農地所有適格法人」とは、農事組合法人、株式会社(公開会社でないもの)または持分会社で、次に掲げる要件のすべてを満たしているものをいう。

では、その要件のすべてとは何なのか、以下で確認することにします(条項は、いずれも農地法2条の3項柱書及び3項各号を意味します)。

  

農地所有適格法人の要件

農地所有適格法人の要件については、法人形態要件、事業内容要件、議決権要件、役員要件が規定されており、これらの4要件(以下「資格要件」といいます)をすべて満たす必要があります。

資格要件を満たしていない場合は農地の所有(売買)は許可されず、また、農地の取得後も資格要件を満たしている必要があります。

ここからは、それぞれについて見ていきましょう。

法人形態要件(3項柱書)

農地所有適格法人の法人形態は、農事組合法人、株式会社(公開会社でないもの)または持分会社(合名会社、合資会社、合同会社の総称)のいずれかです。

事業内容要件(31号)

農地所有適格法人の事業内容は、主たる事業が、農業(農産物の加工・販売等の関連事業を含みます)であることが必要です。

この場合の関連事業とは、農畜産物の製造・加工、農畜産物の貯蔵、運搬、販売、農業生産に必要な資材の製造、農村滞在型余暇活動に利用される施設の設置・運営等(例えば、農家民宿)などをいいます。

法人の主たる事業が農業であるか否かは、直近3か年の農業と関連事業の売上高が、当該3か年の法人の事業全体の売上高の過半を占めているか否かで判断されます。

議決権要件(32号)

農地所有適格法人の議決権は、株式会社の場合は下記の農業関係者が総議決権の過半を、持分会社の場合は同農業関係者が総社員の過半を占めていなければなりません。

したがって、農業関係者以外の者の議決権は総議決権の2分1未満になります。

農業関係者とは、次の者を指します(内容は要約しています)。

  1. 法人に農地の権利を提供した個人(3項2号イロハ)
  2. 農地中間管理機構または農地利用集積円滑化団体を通じて法人に農地を貸し付けている個人(3項2号二)
  3. 法人の行う農業に常時従事(原則年間150日以上)する個人(3項2号ホ)
  4. 基幹的な農作業を委託している個人(3項2号へ)
  5. 農地中間管理機構(3項2号ト)
  6. 地方公共団体、農業協同組合または農業協同組合連合会(3項2号チ)

役員要件(334号)

農地所有適格法人の役員は、役員の過半が、法人の行う農業に常時従事する構成員(原則年間150日以上)であること(33号)、役員または重要な使用人の1人以上が、法人の行う農業に必要な農作業に従事(原則年間60日以上)すること(34号)が必要です。

なお、構成員とは、農事組合法人では組合員、株式会社では株主、持分会社では社員をいい、役員とは、農事組合法人では理事、株式会社では取締役、持分会社では執行する社員をいいます。

 

農地所有適格法人の設立手続

ここからは、農地所有適格法人の中で最も多い株式会社について解説します。

株式会社の設立手続の流れは、以下のようになります。

設立事項を決める

発起人は、会社の社名(商号)や本店所在地、資本金、事業内容、役員構成など、定款に記載すべき会社の基本事項(いわゆる「設立事項」)を決めます。

なお、法務局で本店所在地に同一の商号の株式会社があるかどうかを調査します。

発起人会議事録を作成する

基本的事項を決議し、決定事項は発起人会議事録(発起人が1人の場合は発起人決議書)に記載し、発起人全員が捺印します。

定款を作成する

発起人が作成する定款には、目的、商号、本店所在地、出資財産の価額の最低額、発起人の氏名または名称、住所などの絶対的記載事項、株式の譲渡制限の定め、発行可能株式総数などの相対的記載事項を記載することになっています。

なお、絶対的記載事項は、法律上必ず記載しなければならず、記載がない場合には定款が無効となるもの、相対的記載事項は、定款に記載しなければ効力が発生しないものです。

 定款の認証を受ける

発起人は、作成した定款を公証役場に提出し、公証人による定款の認証を受けます。

出資金の払い込みをする

発起人は、設立時発行株式を引き受け、引き受けた株式について出資金の払い込みをします。

役員を選任する

発起人は、役員(取締役など)を選任します。

定款であらかじめ役員を定めていた場合には、選任手続は不要です。

なお、設立時役員の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定します。

出資履行の完了、各種法令等の調査

役員は、出資の履行の完了、設立手続の法令または定款の違反の有無等を調査します。

代表取締役の選定

取締役設置会社である場合は、代表取締役を選定します。

なお、代表取締役は、設立時取締役の過半数をもって決定します。

設立登記をする

設立登記は、設立時役員の調査終了日または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に行います。

諸官庁への届出

登記簿謄本および代表取締役等の印鑑証明書を取得し、必要な書類とともに諸官庁へ届出をします。

主な官庁は、税務署、都道府県税事務所、市町村役場(税務・国民年金)、労働基準監督署(雇用保険、労災保険)、年金事務所(健康保険、厚生年金)などになります。

 

農地所有適格法人の注意点

継続して農地所有適格法人であるためには、資格要件を継続させるだけでなく、毎事業年度の状況等の報告といった手続きをする必要があります。

仮に要件を欠くおそれがある場合には、農地委員会による勧告等の措置もあります。

主な注意点についてみていきましょう。

法人設立後も継続して要件を満たすことが必要

農地所有適格法人の資格要件は、法人設立時だけでなく、農地の取得時や取得後も継続して満たされている必要があります。

要件を継続して満たしているかどうかは、次に記載する定期報告以外にも、農業委員会による指導・助言によって判断されています。

農業委員会は、設立した農地所有適格法人が資格要件を満たせなくなるおそれがあると認めるときは、当該法人に対し、必要な措置を取るべきことを勧告できます。

定期報告が必要

農地所有適格法人は、毎事業年度の終了後3か月以内に、事業状況等を農業委員会に報告(定期報告)しなければなりません。

なお、定期報告をしない、または虚偽の報告をした場合には30万円以下の過料が課されます。

 

書類の作成依頼や申請手続は行政書士へ

行政書士は、依頼者の作成代行ばかりでなく、依頼者の代理人としても作成業務を担う書類作成の専門家です。

また、農地の取得時についても代理人として行うことができるので、農地所有適格法人の設立からその後の手続きまでお手伝いすることが可能です。

当事務所は、上田市をはじめとして長野県全域において、農地関連を中心に書類作成依頼や官公署への申請手続を承っております。

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まとめ

いかがだったでしょうか。

農地所有適格法人の要件を満たすことで、法人として農地を取得して農業を営むことができるため、仕事の幅が大きく広がるでしょう。

行政書士は、官公署に提出する書類作成や申請業務のスペシャリストとして、農地所有適格法人についての相談・手続代行を行うことができます。

農地の権利の取得(買い入れまたは貸借)・農地転用・会社設立などでお困りごとがあれば、行政書士にご相談・ご依頼されることをおすすめします。

少しでも気になることがあれば、
お気軽にご相談ください。

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